アメリカの風景
最近仕事場にいても暇だし、お昼休みにでも読もうと思って持ってきた分藝(夏)。
…地味に重い。
その中のひとつ、ミヤギフトシさんの『アメリカの風景』を読んで。
タイトルだけではあまり興味を惹かれなかったものの、読み始めたらこれが読みやすくて好きな類の文章だったので止まらなくなった。
いい出会いであっただけに、初小説というのが嬉しいやら悲しいやら…。
読みやすいものだから最初のほうはすいすい流し読みしてたんだけど、途中からそれがもったいなく感じて、少ないページ数ながらたっぷり時間をかけて読んでみた。
まず思ったのは主人公の目線が好きってこと。
次に、羨ましいなぁってこと。
自分の身の回りには、家でお酒を飲んで音楽を聴きながらまったり昔話をできる相手がいないから。
これからそういう友達に出会えるのかな?って思うと楽しくもあったけれど、羨ましさが勝った。
それと同時に、小学生の頃に仲がよかった友達のことを思い出した。
その子と遊ぶときはいつも空想の話をして、自転車に乗りながら田圃や民家の間を走り回っていた。
たまには恋バナや学校での話もしたけど、その頃は空想の世界に浸ってるのが気持ちよかったんだと思う。
丁度その頃に読んでいたでんでらりゅうに影響されたのかも。
いま思えば笑い話の種にしかならないようなもの。
というか、恥ずかしすぎてひとには言えない!ようなものw
でも小さいときのことって意外と覚えてるもんなんだなぁ。
たとえ忘れていたとしてもきっかけさえあれば、あぁあのときね!ってすぐに思い出すことができる。
『アメリカの風景』は、自分のそんな思い出を懐かしませてくれる小説でもあった。
社会人になって、小学生のときに仲のよかった友達と偶然にも再会したことが、何回かある。
だけどぼくは主人公のようにはできなかった。
いまでもふと昔のことを思い出して、やっぱりあのとき声を掛けておけばよかったかな?とか、今頃はどうしてるのかな?とか、考えることもある。
だけど自分から行動しようっていう気力みたいなものがなかったんだろう、結局。
もしくは、いまの自分を見られるのが恥ずかしかったのかもしれない。
ぼくは、約束もしてないのに外で知り合いや友人に会うということに関してすごく抵抗がある。
自分だけの時間に割りこまれるのが嫌なのか、OFF状態のときにONに切り替えないとならないのが面倒なのか、自分でもよくわからないけど…。
とにかく自分だけの時間を過ごしているときに友達や知り合いにばったり出くわすのがあまり好きじゃない。
誰かと一緒に買い物に行くのも好きじゃない。
そもそも会話が嫌。
ばったり出くわしたときの会話と言ったら、「元気?」とか「いまどうしてるの?」とか、そんなところだろう。
中には、聞いてもいないのに自分の近況を話し始める人だっている。
それが嫌…。
知り合い程度の繋がりしかない相手であれば尚更。
知りたいと思っていなかったり、話したくないと思っていることを話さなければならないような状況が嫌いだ。
「知っている人間が誰もいないところへ、行きたかった。道を歩いてても、誰かに見られている気がしない場所に……」
だからこそ主人公のこの言葉に共感できたのかもしれない。
かと言って、外国や都会にまで出るような勇気はぼくにはないけれど…。
そしてこんなことを言ってるからあんまり人付き合いが上達しないんだろう…。
それはともかく、小説のなかにいくつか好きな言葉を見つけられた。
「強く望んだ時だけ現れる、秘密の場所」。
これも最後のほうの文章だけど、
「全ての対話をひとつの言葉に、全ての書物を一枚のページに、世界全てを一冊の本に完全にもどすこと」。
自分からは到底出てきそうにない言葉の羅列。
だからこそ気に入ったんだろうなぁ。
登場人物が喫煙者なのに一本も吸うことなく読み切れたのは短編だったからこそだと思う。
小説でも映画でもアニメでも、喫煙キャラがいるとついつられて吸いたくなるものなんだけど、今回は集中力のほうが勝ったらしい。
読み終わった後、余韻に浸りながら煙草を吸ったら美味しかった。
お酒もあれば最高だったけど、いまはまだ勤務中だし昼間だから自粛。
そのタイミングで仕事ができちゃったのは最悪だったな~。
もうすこし余韻に浸りたかったのに…。
次にこの作品を読むときは家にいるときにしよ。
晩酌のときでもいいかもしれない。
いままでの出会いと別れ、これからの出会いと別れを思いながら。
これが短編じゃなくて本だったら迷わず買ったであろうことを悔やみながら。
そしてこれから書かれるであろうミヤギフトシさんの本に期待を籠めながら。
あれ…?本出すんだったっけかな?
あとで調べてみようっと。
というわけで、消せる蛍光ペンと一緒に読んだミヤギフトシさんの『アメリカの風景』でした。
↓ちょっとググったら記事を見つけたので添付。
https://bijutsutecho.com/series/3666/